2016/12/06
2017年「おんな城主 直虎」のナレーションでは棚田で有名な浜松市の久留女木(くるめき)に伝わる竜宮小僧の伝説が重要な役割を果たしています。竜宮小僧の正体を知る前にまずはこの伝説のお話を見ていきましょう、分かりやすくイラストを描いてみました。
昔、久留女木川(都田川の上流部)には竜宮へ通じているという深い水をたたえた大きな淵があり、そこには小僧が住んでおり人々は彼を竜宮小僧と呼んでいました。
竜宮小僧はよく淵から飛び出し村人の田植えや洗濯物の取り込みを手伝ってくれたので村人は彼を大変可愛がっていました。
しかし村人が竜宮小僧にご馳走をしようとすると、なぜが蓼汁(たでじる)だけはひどく嫌っていました。
※蓼はタデ科の植物で食用になり、昔の人は時々みそ汁の具として使っていた。
そんな様子を面白がった一人の村人はこっそり内緒で竜宮小僧に蓼汁を食べさせます。
すると大変!竜宮小僧はバタリと倒れてそのまま死んでしまいました。竜宮小僧にとっては蓼汁は命に関わる毒だったのです。
後悔し可哀そうに思った村人は久留女木にある中茂の大きな榎木の傍らにねんごろに小僧を葬りました。
すると不思議なことに木の根元からこんこんときれいな水が湧き出るようになりました。村人はその水を利用し田んぼを作りおいしいお米の産地として知られるようになりました、これが現在の久留女木の棚田です。
もうお分かりですね、どうやら竜宮小僧の正体は河童だったようです。この竜宮小僧の話は河童の親子の話としても伝わっており、伝承に出てくる竜宮小僧の墓の場所からは実際に湧き水が出ており現在も久留女木の棚田を潤しているそうです。
【追記】大河ドラマ第一話の中でおとわ(直虎)は病弱な亀之丞に向かって「われは亀の竜宮小僧になる」と言っています。表面的に聞けば村人を助けた竜宮小僧のように亀之丞を助けるという意味にも聞こえますが、伝説の竜宮小僧は最後に死んでしまいます、深読みをするとおとわ(直虎)は幼少のころから竜宮小僧のような自己犠牲、つまり裏切られてもなお相手のために尽くすという気持ちがあったという事がこのセリフに表れているのではないかなと感じます。
またこの久留女木の棚田は大河ドラマのロケ地にもなっています。前回参加した前田吟さん(井伊直平役)の講演会では棚田作りをした方がゲストに参加し撮影の裏話などを聞かせてくれました。
実際に高齢化が進む中でこのような伝説が残る久留女木の棚田を維持するには大変苦労が伴うそうです。大河ドラマをきっかけに全国的に棚田の価値が再認識されるといいですね。
参考文献
「井の国 棚田と伝承の里」(鈴木一記)
「ふるさと再発見 遠州の民話」(加藤修一)
このブログは井伊直虎ゆかりの地 静岡県浜松市の印刷屋ワイピーピーの公式ブログになります。